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彼に案内されて着いたのはすぐ近くの小さな山小屋だった。
「……どうしたら……」
すぐに帰れるのか、はたまた、もう二度と帰ることはできないのか。
座ったまま床をただただ見つめる私に痺れを切らしたのか、しばらく黙っていた男の人が口を開いた。
「……お前、どっから来たんだ?」
「……」
答えるに答えられない。
言っても通じるはずがない。信じてもらえる自信がない。
「まぁ、言いたくなけりゃいいけど」
「ごめんなさい」
男の人は徐に囲炉裏の灰を構い始めた。どうやら種火はついていないようだった。
考え事をしているのか彼はしばらく黙っていたが、埒が明かないと考えたのかゆっくり口を開いた。
「どっから来た奴でも構わねえが、この後一人で帰れるのか?」
「そ、れは——」
彼の言葉に思わず口をつぐむ。
気まずい沈黙の時間が流れた。
その空気に耐えられず私は小さく口を開いた。
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