第一章 君のいる場所へ

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「こんな感じ、かなぁ」  軽く腕をあげてチェックした後、髪を結ぼうと鞄からヘアゴムを取り出した。 「あ、でもヘアゴムなんてこの時代の人は使わないか」  だからと言って髪を束ねないのも違和感だが。 「……っ! そうだ携帯!」  鞄の中に携帯を入れていたことを思い出し、慌てて引っ張り出した。 「やっぱり。そう、だよね」  携帯の電波は圏外を指し、当たり前だがネットも繋がっていない。  電池は80%を示している。  私はため息をつき、携帯の電源を切って再び鞄にしまった。  本当にこの時代に閉じ込められてしまったらしい。 「おーい、出来たかー?」 「あっ、はいっ!」  出口を開けると彼は暇そうに戸の横に座っていた。
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