第一章 君のいる場所へ

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 私、小河麻琴(おがわまこと)は大きなため息をつきながら帰宅路を歩いていた。 「高校最後の学祭が和風喫茶かぁ……劇とかあるでしょうに」  学祭の出し物が喫茶店に決まったため、テンションが上がらず、いつも重いリュックがいつも以上にずっしりとのしかかってくるように感じる。  最後の学祭は思い出に残る劇や合唱などがしたかったけれど、喫茶店の圧倒的な人気には抗えなかった。というか、クラスで地味な私に、劇をしようなんて提案できるはずもなく。 「殺陣とか、ちょっとやってみたかったな」  手に持っている袋の中身、緑色の着物を恨めしく見つめる。  京都で抹茶パフェが食べたくなるような綺麗な抹茶色の着物は男子もよく似合う色だし、可愛いと言えば可愛いかもしれない。  メイド喫茶みたいなものではなかっただけよかったのかもしれないが、せっかくの学祭なのに地味と言えば地味な衣装だ。 「浅葱色とかがよかったなー、なんて」 浅葱(あさぎ)色とは、薄い藍色、または薄い青緑色のこと。 そして、新選組の羽織の色でもある。
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