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「翔……翔、もう映画終わりよ。起きて」
「ん?……明日香?ああ……今の、夢か―― あっ!」
目を擦って辺りを見回すと、瀧沢翔は勢いよく立ち上がった。
エンドロールも終わり、館内は既に灯りが点って観客が出口へ向って移動し始めている。
翠がかった目を細め、翔はばつが悪そうに明るい茶色の髪を湛える頭を掻いた。
スラリとした長身に整った顔立ちの翔の仕事は掃除屋。
パピヨンというコードネームを持ち、人の恨みを晴らして報酬を得る。
重ねて彼は、特殊な能力を持っていた。
サイコキネシス、テレポーテーション、テレパシー、サイコメトリー、予知、そしてリモートビューイング。
そう―― 超能力。
しかし翔は能力を持つ事を嫌悪していて、自分から使う事は滅多になかった。
そしてもしも能力を使った時は、使った能力の大きさに従い、数時間から数日間眠ってしまうという特性も持ち合わせていた。
「ゴメン!俺、眠っちゃったんだ」
「ええ。とっても気持ち良さそうに眠ってたわ」
「ホントにごめん。デート中に寝るなんて……」
「そうね」
すました顔で明日香が答えると、翔は顔を覗き込むようにして小声で問い掛けた。
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