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「なあに?帰って来ちゃいけなかったみたいね」
「だって、せっかくのデートなんだから、もっとゆっくりして来るかと思ったのよ。明日の朝まで……とか。ね、飛鷹さん」
「ああ、そうだな。夕飯は三人で食おうと思ってたんだ」
髪を掻き上げて微笑んだ飛鷹は、悪戯っぽい目で翔を見た。
飛鷹雄司―― イーグル。
元心理学部準教授。
そして翔と同じ掃除屋。
鍛えられた筋肉質な身体と危険な雰囲気は、いかにもそれらしい。
「姉貴!何言ってんだよ !?」
「何よ拓己、急に大きな声出して。ビックリするじゃない。さっきまでいないみたいに静かだったのに」
「姉貴が変なこと言うからだよ」
拓己がチラリと明日香に目をやる。
目が合うと、拓己は途端に真っ赤になって横を向いた。
榊原拓己は葵の弟で高校二年生。
女装しても違和感がない程の美形に反して、正義感丸出しの男っぽい性格。
当然のようにガールフレンドには事欠かない―― はずなのだが、いまだに彼女がいないのは、ひとえに明日香に憧れているせいだ。
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