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「見つからねぇ――ッ! ああッ! クソ!」
遠くでアレックスが叫んでいる声が聞こえる。
ジェフは休憩がてら、滝つぼのそばに腰掛け滝の音色に耳を傾けていた。
昨日の夜にデレクが言っていた『届かない唄』が、もしかしたら耳に
聞こえてくるかもしれない。
そう思ったのだ。
だがそんな幻聴が鼓膜(こまく)を揺らす気配は無く。
大量の水が振ってくる音だけが、耳朶(じだ)を打つのが現実だった。
だが、ジェフは確かに聞いたのだ。
昨夜の晩、疲労の頂点で眠ることすら難しかった夜の最中に、
背後から自分を呼ぶ声を。
あれがもう一度聞こえれば、そんな想いが頭の中で溢れかえる。
見上げると滝の頂点の向こうに、太陽が高く上っているのが見える。
未だに休むことなく捜索を続けている二人に目を落とすが、
人面花が見つかったような明るい気配は感じられない。
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