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「ここが今日行った草原だ。これを消して、残っている箇所はここと……、
ここと……ここだな」
デレクの指が残っている三つの赤マルを示していく。
「明日はここに向かおうと思う」
「そこは……滝? 小さな川のように見えるけど、そんなところに
花が咲くかい?」
ジェフの疑問はもっともであった。地図を見ると、滝の周囲には岩場が多い。
植物が根を下ろしているとは考えにくい場所だった。
デレクは顎に指をかけて、おもむろに語りだす。
「……この地に住まう人に色々と聞いて回ったんだが、聞いた人全員が、口を揃えて
語りたがらない物が一つあった。『届かぬ唄』という名の短い歌らしいんだが、
その中に『花の瞳』というフレーズが出てくる」
「それが、人面花を表しているってこと?」
少々短絡的とも取れるジェフの言葉に、デレクは肩をすくめて見せた。
「それは分からないが……可能性の一つに入れるだけの意味はあると思う。
『届かぬ歌』というのも、滝に邪魔されて『届かぬ』唄と考えることもできる」
だから明日は滝周辺を捜索しよう、とデレクは締めくくった。
あれほど苛立ちを見せていたアレックスは、意外にも反論一つ口に
しなかった。
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