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アレックスは物事を深く考えるというのが苦手ということもあるが、なんだかんだ言って
二人の行動は信頼していたのだ。
「明日は朝早くから動く、そろそろ解散としよう」
デレクの言葉を合図としたように、三人は横になって体を休ませる。
日の出直後から今の今まで、慣れない探索を続けてきたのだ。
体力に優れるアレックスでも、疲労は耐え切れない段階にまで来ていた。
ひ弱そうなジェフはというと、倒れこむように毛布に潜り込みそれきり
ピクリとも動かない。
夜の帳(とばり)が辺りを覆うと、一斉になにかが動き出す音が聞こえる。
獣の鳴き声、草むらを揺らす音、水しぶきの余韻。
生き物に由来する音という音が、夢見の世界に水を差す。
不思議と風はほとんどなく、時折止まったように空気がしんと静まり返るのが
却(かえ)って背筋を凍らせる。
背後に感じる気配。
振り向いても誰も居ない。
皆が寝静まっているというのに、自分だけなにを恐れているのか。
緊張に身を固めて、酷く無為な時間を過ごす。
やがて疲労の糸に引かれ、意識が闇に溶けていった。
眠りにつくその瞬間、ふっと耳元で自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
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