狼の片思い

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それが分かったのは本当に些細な事だった。 あいつの一言。 あいつの一言で充たされたから。 「うわっ!!藤井さん、ありがとうございます。」 そう言って嬉しそうに笑って・・・。 それも一回じゃない。 何度も何度もあって・・・。 毎回毎回必ず気付くんだ・・・。 いつもそうだった。 オレのした事は誰かの手柄になっていて。 お礼なんて滅多に言われた事が無かった。 家族以外には滅多に・・・。 北川みたいに誰かの視線を気にして仕事をするなんて出来なくて。 気が付けば皆が嫌がる仕事ばかりが残ってて。 それをするのはいつもオレの役目。 だからってお礼を言われたいわけじゃないけど。 今まで誰も気付かなかったのに。 唯一コイツだけが気付いたんだ・・・・。 だからかな・・・。 ただ単に嬉しかったんだ・・・。
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