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人気の感じられない空いた高層ビルの一角。
そこを一人の少年が全力疾走で走っていた。
助けを求めたくとも、この周囲には誰もいない事は良く知っている彼は様々な感情を堪えながら走る。
追ってくるのは刺青が入った連中。
俗に不良と呼ばれる者だ。
当然少年よりも大きく、しかも複数いる為、そんな彼等が追い掛けてくるのだから怖いのは明らかだ。
一体どれたけ逃げたのだろう?
お互いに疲れを見せ始める中、縮まらない距離が突然縮まる。
「ーーあっ!?」
少年はそんな声を出しながら地面を転げ回る。
つまり転けたのだ。
限界に近付き、恐怖に脚が上手く回らなかったのであろう。
「はぁ、はぁ、……ようやく止まったかよ? チョロチョロ逃げ回りやがって」
先人を切る男性がそう言うが全く耳に入ってない少年は地を這いつくばりながらも逃げようとする。
しかし、それは呆気なく不良の足が少年の身体を捉える事で止められる。
「ああっ!?」
「おっと。もう追い掛けっこは終わりだクソガキ」
グリグリと力強く踏み、少年を苦しませる男性。
取り巻く二人は下品に笑うだけである。
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