450人が本棚に入れています
本棚に追加
/250ページ
「噂をすれば影がさす。いい言葉だ」
「え、ゆう君がボクの噂を!?」
逆賊、狭間啓太は背反により春菜の接近を許した挙げ句、そればかりか春菜の言動を助長するような言葉を吐き出しやがった。お陰で春菜の瞳は当社比四割増しの光量を振り撒いていた。
「えへへ、嬉しいなー」
「ばっ、やめろ!」
相好を崩し、人目も憚らずにところ構わず抱き付いてくる幼なじみ。流石に高校生にもなると、昔にはなかった盛り上がる胸部やらフレキシブルな身体やら甘い香りやらが俺の心神を痛く打つ。
「照れなくてもいいのにー」
なんて宣う春菜は、更に掻き抱く力を込め始める。はてさてどうしたものかと思案に余りながら、俺の視線はちらりと神崎へと向いた。しかし彼女の視線は相も変わらず国字小説を追っているわけで。
俺の恋が前途多難なのは明亮であった。
最初のコメントを投稿しよう!