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「き、近所でも女好きで誉れ高いって、それは自慢にならな――」
「ちぃ、左手に巣くう魔物が以下省略!」
「ぶるぁぁぁあああ!!」
腐乱死体のように起き上がって来た啓太は再び、今度は若本様よろしくバルバドスのような雄叫びをあげて沈黙した。そんな啓太を視界の隅に追いやりつつ俺は視線を教室全体に向ける。
たらりと、啓太の目からぬめりとした赤い液体が垂れていたように見えたが、そこはイケメン補正でなんとかしてくれると信じているので気にしない。
因みにいまは昼休みの真っ只なかだ。
従って、生徒たちは各々仲睦まじい友達同士で駄弁ったり、持ち寄ったお弁当をつついたりと和気藹々としている。
しかしそんななか、俺の視線が止まるのは楽しげな雰囲気から隔絶されたように静寂を保つ異質な空間。それは俺の座る窓側一番後ろの正反対、廊下側の一番後ろの席に存在している。
特に友達と駄弁るでもなく、お弁当を食べるでもないその席に座る人物は、ただ黙々と小説の文字を目で追っていた。
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