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神崎美羽(かんざきみう)。
それが彼女の名前であり、俺が唯一知っている彼女の情報だ。
そして俺の片恋相手、その人である。
神色自若とした姿勢で小説を読む神崎。彼女の髪の毛は椅子に座っていると床に届きそうなほど長く、栗のような淡い亜麻色をしていた。
新雪のごとくきめ細かな指先でシュッと頁を捲る。その僅かな動きだけで、俺の心は留めようもなく高鳴っていた。
我ながらなんてウブなのかと嫌になる次第だけれど、こんな気持ちになったのは生まれてこのかた彼女が初めてなのだから詮ないことだ。
齢十七歳、初めての恋なのだから。
「なるほど、相手は神崎か」
「き、貴様、どうしてそれを!?」
「お前の視線と表情、それと読心術」
読心術とか冗談だよね……?
そ、そんな真面目な顔したって騙されないんだからっ!!
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