7人が本棚に入れています
本棚に追加
生きて、生き抜いて、自分だけの小さな太陽に会う。
それが彼の生きる理由。
それが彼の日課になった。
狩りをしては橋を渡り、花の側で眠る。
花は何も言わず、独りぼっちの彼にただ温もりを与えた。
久々に過ごす心穏やかな日々。
花に寄り添う百獣の王。
端から見ればそれは少々滑稽にも見える。
だが彼にとってはそれが何よりも至福であった。
待つ者がいる、ただそれだけで生きていけるのだから。
その日、久し振りに大きな獲物にありつけた彼は機嫌良く帰り道を歩いていた。
あの花のように輝く琥珀を土産にくわえて。
そして橋まであと僅かというところに差し掛かった時、生温い風が吹き抜け、突如黒い雲が空を覆った。
稲妻が空を走り、白い光が辺りを照らす。
バラバラと降り始めた雨は瞬く間に横殴りへと変わり。
あの花は散ってはいないだろうかと嫌な胸騒ぎの中、彼は足を早めた。
吊り橋に足を踏み入れれば、あの花はすぐそこ。
雨に霞む視界に黄色い姿が朧気に浮かんだ刹那、
眩い光が辺りを包み、一際大きな雷鳴が彼の耳をつんざいた。
最初のコメントを投稿しよう!