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どこにでもある普通の喫茶店、その店内に不釣り合いな二つの影。
「盟主は何と?」
フード着きローブを羽織、そのフードを目深に被った男が、対面に座る人物に話しかけた。
「ふふふ、何も返答はありませんでしたわ。暫くは我々【シュバリエ】に一任するみたいです」
それに応える、深紅のドレスに身を包んだ金髪の女性。組まれた脚のドレスのスリットから時折見える色白の太ももに回りの男性客達が釘付けになっている。
「そうか。しかしそれならば、【ファントムビジョン】の同行は見張っていたほうが良いな。何をしでかすかわかったものでわない 」
「それについては大丈夫でしょう。彼も、紛いなりに私達と肩を並べる【四賢将】の身、時が来るまでは大人しくしているようですわ」
ファントムビジョンと呼ばれた者を心配するローブの男に対し、紅茶を一口のみ美しいとしか言葉が出ないほどの微笑みで返す女性。
「奴の言動は信用できんが、貴殿が言うのなら間違いはなさそうだな【グラ】」
男がそう言うと、女性は顔をしかめて飲んでいた紅茶のカップを置いた。
「あまり、その名で呼んでほしくはありませんね。優雅さに欠けますし、何より私にはちゃんとした名前がありますわ」
「何を言い出すかとおもえば、我らに名などさして重要でわなかろう」
男は、感情の無い声で女性の言った言葉を一蹴した。
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