2008年9月4日 北海道星凪村 黄昏

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今じゃススキノでNo.1のキャバ嬢である夢乃。 だが俺からしたら昔から何も変わらないのだ。 それは皆に言える事であり、無論俺も例外じゃない。 見た目は大人び、結婚し中には家庭を築く者もいる。 だが、皆変わらないのだ。 集まれば昔と同じく何でもない話に華を咲かせ、今回のような胆試しなんてのもやる仲なのだ。 「無事でよかったよ。烈人達も来てるんだ。腹、減っただろ?」 夜の蝶として華やかに過ごす夢乃は真っ赤なドレスをボロボロにし、髪やメイクも台無しになっている。 だが、俺の前ではそんな事は気にしないでいてくれる。 当然、俺も気になんて留めない。 どんな姿をしてようが夢乃は夢乃であり、俺の大切な友なのだから。 「服は麻美や絵里のを借りてくれ。皆心配してるんだぞ?」 俺は夢乃を背負うと再び長い石階段を今度は下り始める。 今度はゆっくりと一歩一歩を確かめるように。 夢乃を背負う俺の影が長く伸びている。 綺麗な夕日を見ていると穏やかになる。 「……皆は無事なの?」 「……お前で二人目だ。智久は昨日保護した。烈人と麻美、絵里は俺と一緒に居たから始めから無事だよ。」 「……心配ないよね?また、皆一緒に笑えるよね?」 「当たり前だ。秋津、姫野の両家が総力を尽くして探索している。栞も協力してくれるんだ。何があろうとお前達は俺が守り抜くよ。」 黄昏時が終わりを告げようとしている。 今晩中に相手の正体ぐらいは掴みたいが今は夢乃が第一だ。 栞に預けておけば俺は自由に探索できるしな。 「……とおりゃんせ……人体実験……地図から消えた村……」 今は点でしかないが、何れは線で結ばれ円となる。 人の犯した業か、はたまた〈何か〉が仕組んだシナリオなのか…… 今の俺には答えが出せずにいた。
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