2008年9月4日 北海道星凪村 歌声

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カビ臭い地下への階段を俺は懐中電灯の灯りを頼りに下って行く。 所々にランプが吊るされているが長い事使われた形跡はない。 暫く降りて行くと階段は終わり長い廊下へと出た。 左右に幾つかの扉があり、一番奥には見るからに重そうな錆びた鉄の扉が鎮座している。 俺は一番手前の扉を開けた。 「………何だ?此処は?」 そこは6畳程の広さの部屋で壁一面に棚が設けられている。 そして地面には無数の紙と思われる物が散らばっていた。 俺はその中でも状態がいいものを手にとってみる。 「……1942,5,……戦時中の日付だな。此処は資料室か何かか?この村で行われていた人体実験のものらしいが、何でこんな地下に?」 他の資料も手に取ってみるも、それは既に姫野の家が調べ上げていた物と同じ文献であり俺はその部屋を後にした。 他の部屋も特に目ぼしい物は見つからず俺は一番奥の鉄の扉の前へとやって来た。 当事は重く佇む扉であったかも知れないが今では過去の栄光はなく錆だらけで少し押しただけで簡単に扉は口を開けた。 「うっ………」 扉を押し退けた俺は思わず口元を覆った。 先程までのカビ臭さとは違う鼻に付く強烈な悪臭が漂っていた。 生き物の腐廃臭に様々な薬品の臭いが混ざった臭い。 あまりの臭いに吐き気と目の痛みを体が訴えるが俺は前へと進んだ。 鉄格子で区切られた小さな個室が幾つも並び、その中には大小様々な人間の白骨体が転がっている。 其処を塒としていた虫が俺の当てた光に驚き這いずり回る。 よく見ると人間だけではなく様々な動物の骨も転がっていた。 おそらくは実験の被験体となった者達の亡骸であろう。 共通して全ての頭蓋骨に一円玉程の穴が開けられており、明らかに人工的に開けられたものである事を語っている。 俺はさらに奥へと進んで行くと再び鉄の扉が姿を現した。 しかし、この扉は押しても引いても開く事はなかった。 漂う薬品の臭いはこの中からする。 ならば、この奥が実験が行われていた場所であり此処に潜む者の正体を確かめるヒントが隠されている筈だ。 しかし俺の思いとは裏腹に扉は開く事をせず俺は一旦諦めて他を探索する事にした。 臭いに耐えきれず先程の廊下へ戻ると俺の耳に微かではあるが音が聞こえてきたのである。
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