一章、『滅びの町のダイドダイド』

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 ファウィルの今は亡き祖母は、小さな頃にその町に住んでいたのだという。  家庭の事情で引っ越す際に、よく解らない御札みたいなのを渡されたそうだ。更に、『もしも困った事があったら連絡して欲しい』的な事を言われたそうだ。  あまり詳しい話しは知らないが――――実際に、御札は役に立っている。  魔女はかなり長生きらしいから、もしかしたら生きているかもしれない。ファウィルは今、藁にもすがる思いで会いに来ているのである。  ふぅ、と小さく息を吐き出し、ファウィルは青空を同じく青い瞳で眺める。男性にしては少し長い金髪の髪をかきあげて、少し立ち止まった。  茶色っぽいロングコートに、髪をかきあげた手を突っ込み、再び歩くと……見えて来た。  森があけて、木々の無い空間の先に、廃墟となっている町が。
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