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「まず先に断っておく。貴様らに拒否権はない。」
黒いローブと仮面をつけた、恐ろしく背の高い女だった。
私は氷よりも冷たいその女の目を、見返した。
私と、もう一人の少女…村崎(むらさき)と呼ばれていた…は、この理不尽な状況に、無言で耐えていた。
…いや、無言の抵抗をしていた、と言った方が正しいのか。
「返事をしな。口は自由にしてやってるだろ?」
「ぐうッ!!」
女は村崎の鳩尾(みぞおち)を、先の尖ったブーツで思いきり蹴りあげた。
手足を鎖のようなもので拘束された私達は、身動きがとれない…。
「暴力は止めて…!」
なんて卑怯なの…!
私は女を思いきり睨むと、思いつく限りの言葉で、罵倒(ばとう)した。
「そう。…その意気だ。」
女はニヤリと笑う。
「貴様らには、これからあるゲームに参加してもらう。
いつまで綺麗事を言ってられるかな?」
「ゲームだって?馬鹿げてる…!」
村崎という少女が初めて口を開いた。
「こんな事が、許されると思うなッ!」
「許しだと?…無神論者が、知ったような口をきくな。
…これよりゲームの説明を始める。
死に急ぐは自由だが、生きたければ黙って聴け。」
女が顎(あご)を上げると、それまで置物のように微動だにしなかった、黒いローブの手下たちが、急に動き始めた。
「…何を…。」
私の制服に、一人の手が伸びた。
おぞましさに顔を背けると、手はすぐに離された。
「…?」
見ると、胸のあたりに赤い十字架を象(かたど)った、バッチのようなものが付けられていた。
村崎の胸には青いバッチが。
「貴様ら二人は、チームのリーダーだ。
チームメンバーは追って、追加する。
メンバーには目印にこのバッチを付けておく。それでチームが判別出来る。」
チーム?リーダー?
何なのよ、急に?
…意味が分からない。
「猪ノ瀬が赤チーム、村崎が青チームのリーダーと言うわけだ。」
女は、その後でゲームのルールなど、細かい説明をした。
この状況下で、どうやってそれを頭に叩き込め、と言うのか。
まるで、溢れ落ちる液体を指ですくうように、私は記憶することに集中した。
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