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終業のチャイムが校内に響き渡る。気分きままに空を見上げていたが、白い雲が気持ちよさそうに青空に浮かんでいたので、思わず手を伸ばして見た。
今は校舎屋上の貯水タンクが設置してある高めの場所に寝ているが、流石に天高くの雲を掴むなど出来ない。なんと言うか胸の内がすっきりしないので尚更、小さく溜め息を吐いた。
「篝火先輩~」
……ん、と名前を呼ばれて起き上がる。
「なんか用事?」
下にいるのは細身の女の子。自分と同じ、緑色を主体とするブレザーに高校指定の長さ以上あるスカート姿でこちらを見ていた。
「今日の夕方連合集会あるんですが~参加しますよね??」
また集会か。力の固持には集会欠かせないらしいが、私的には群れる気は本当は無い。
「パスパス、副長に任せておいて」
「で、でも、そろそろ集会でも篝火さんの姿が見たいって……」
「そんなん言うなら私を降ろせばいいでしょう?」
「そ、それは困ります。どうか出てくれませんか?」
ゆっくりと立ち上がり、身体を解すように背伸びをする。結った黒い髪を払いのけ、また一つ溜め息を吐く。
「悪いね。私はそんな気分じゃないんだ。そう言ってくれないかな」
自然と浮かべた薄い笑みは心情を見せるもので、後輩の女は何も言えなくなっていた。
「悪いけど頼んだよ」
ぽーんと貯水タンクからジャンプすると、軽やかに着地を決めて、屋上を後にした。
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