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事の始まりは
数分前のことだった。
珍しくお互いの部活の
休みが重なったので、
久しぶりにデートだった。
休日と言うことで
街は人でいっぱいだ。
だからチャンスだと思ったんだ。
「今日、人多いね。」
うん、と答えた彼は
前を向いたままだ。
「ねえ、
こんなに人が多かったら
はぐれちゃいそうだね。」
うん、と彼は
未だ前を向いたまま。
そして私は勇気を振り絞った。
「ねぇ、手繋い―――」
「はぐれないだろ。」
たまたまか、わざとか。
彼の言葉に、意を決して
発した言葉はかき消された。
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