それは地底の物語

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「え……あ、貴女は……?」 「あ、そっか。貴女は私のこと知らないよね。私、古明地こいし。貴女の神社にも行ったことあるよ」 早苗はこいしを知らないので、当然混乱する。 そんな早苗の動揺も汲み取らず、こいしはにっこりと笑って自己紹介をした。 「は、はい。古明地、こいしさんですね。私は東風谷早苗と言います」 「うん。知ってるー」 「あ、諏訪子様とかに聞いていますか?」 「んーん? お兄ちゃんの心にいたから、貴女」 「……心……?」 「うん。私、覚りっていう妖怪なんだ。人の心を見ることができるの」 「そのような力が……。ということは、私が今考えていることもお見通しと言うわけですか」 「私が見れるのは、お兄ちゃんの心だけだよ。瞳、閉じちゃったから」 とん、とこいしは自分の胸辺りに浮かぶ第三の瞳を軽く指で叩いた。 春良から見ると、それはしっかりと開かれているのだが、早苗からはそうは見えない。 「……す、すいません。よく分かりません」 「私は覚りを捨てたけど、お兄ちゃんを好きになったから、お兄ちゃんの心だけ読める。これでいい?」 「………………戌井さん」 「……は、はい?」 「諏訪子様には、しっかり報告しておきますから」 それはきっと、伝達だとかそういったレベルのものではないだろう。 特に、春良にとっては死刑宣告に近い。 「もー! そんなのはどうでもいいのっ! ね、ね、お兄ちゃん、お家がないって言ってたよね?」 早苗の威圧感に押されていた春良に抱きついて、こいしが見上げるようにして見つめてきた。
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