それは地底の物語

5/5
前へ
/47ページ
次へ
「…………はぁ……」 そんな様子を見て、早苗は小さく息を吐いた。 (また、戌井さんの悪い癖が出てたみたいですね……) されど、ここは地底。 さきほどさとりが言ったように、実のところ地上と地底は行き来していいわけではないのだ。 詳しいところは知らないが、きっと何かしらあるのだろう。 (なら、地底の方が戌井さんに会うのは、かなり難しいことですし……) それなら、まぁ。 今くらい、甘く見てもいいんじゃないだろうか。 「古明地さん。戌井さんを何日か預かってくれませんか?」 「……けど、さっき言ったように地底は……」 「大丈夫ですよ。ね? どうかお願いを聞いてもらえないでしょうか?」 「…………」 なんというか、これほどまでに先の展開が分かるような顔をされては、こちらの方が恥ずかしくなってくる。 悩んでいるふりをしているが、頭の中ではすでに答えが決まっているような。 覚りが覚られるとは、因果応報とでも言うべきなのか。 「……一度、受け入れたことは確かですし。まぁ、せめて地底にいる間は……地霊殿が面倒をみることにしましょう」 「い、いいのか? さとり」 「……は、はい。しかたないことですから」 「やったー! ねー、私の部屋で一緒に寝よーよー!」 「い、いやいや。流石にそれは……」 飛び跳ねて喜ぶこいしと、顔を赤らめて背けるさとり。 なぜだろう。 なんだか、わくわくしてきた。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加