16人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………はぁ……」
そんな様子を見て、早苗は小さく息を吐いた。
(また、戌井さんの悪い癖が出てたみたいですね……)
されど、ここは地底。
さきほどさとりが言ったように、実のところ地上と地底は行き来していいわけではないのだ。
詳しいところは知らないが、きっと何かしらあるのだろう。
(なら、地底の方が戌井さんに会うのは、かなり難しいことですし……)
それなら、まぁ。
今くらい、甘く見てもいいんじゃないだろうか。
「古明地さん。戌井さんを何日か預かってくれませんか?」
「……けど、さっき言ったように地底は……」
「大丈夫ですよ。ね? どうかお願いを聞いてもらえないでしょうか?」
「…………」
なんというか、これほどまでに先の展開が分かるような顔をされては、こちらの方が恥ずかしくなってくる。
悩んでいるふりをしているが、頭の中ではすでに答えが決まっているような。
覚りが覚られるとは、因果応報とでも言うべきなのか。
「……一度、受け入れたことは確かですし。まぁ、せめて地底にいる間は……地霊殿が面倒をみることにしましょう」
「い、いいのか? さとり」
「……は、はい。しかたないことですから」
「やったー! ねー、私の部屋で一緒に寝よーよー!」
「い、いやいや。流石にそれは……」
飛び跳ねて喜ぶこいしと、顔を赤らめて背けるさとり。
なぜだろう。
なんだか、わくわくしてきた。
最初のコメントを投稿しよう!