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「痛ってぇ………」
「遅れた罰よ」
「それぐらいにしといて、早く車に乗れ!
渋滞に巻き込まれるぞ!」
秀昭の言葉で、夏海と静香は車に駆け寄った。優哉は、頭を押さえながら直輝に声を掛け、車に駆け寄った。直輝も優哉の声に反応し、慌てて車に駆け寄った。
しばらくして、秀昭が運転する車は学校に着いた。
昨日見た光景と変わらず、人っ子一人いない校庭………
潰されるのは約一ヶ月後の事だった。
「…………
潰されるのは、今日から約一ヶ月後か………」
「…………
やっぱり、名残惜しいよな………」
「あぁ………」
「10年前よね………
ここ卒業したのって………」
「あぁ………
春休み入った頃だったよな………
俺達が引っ越したのって………」
「そうそう」
「そう言えば、お前ら何で引っ越ししたんだ?」
「私は親の仕事の都合で」
「私も、夏海と同じ」
「僕は叔母の夫が亡くなったからって言って、それで一緒に暮らすことになったんだ………」
「俺は親のご希望で、都会に引っ越すことになった。」
「俺は、お袋が死んじまってその後すぐに親父が転勤になったんだ。」
「そっかぁ………
秀昭、お母さん亡くなったんだよね?
確か…………」
「卒業式挙げた一週間後の事だよ………
買い物途中に、都会から着ていた車に跳ねられたんだ。」
「…………」
「て、言っても………
俺、お袋とは仲が悪かったからな……」
「そんなこと言ってたな。確か、10歳年下の妹がいて、その妹ばかり可愛がってたんだよな?」
「あぁ………
そろそろ行くぞ」
「うん………」
名残惜しそうな声で、助手席に座っていた夏海の返事で、秀昭は車のエンジンを掛け、車を走らせた。
『さて………
君達はどっちを選ぶかな?
『生』か『死』か…………』
校門に垂れ下がっていた看板が、風で揺られカタカタと音を鳴らし、辺りを響き貸せた。
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