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「それで愛想をつかされたんですか?」
「やっぱりそうなのかな?」
「さぁ、本人に聞いてみないとわかりませんけど」
なくもない理由ではある。
「でも彼女、今の美鈴ちゃんみたいにずっと黙ってそばにいてくれてね、一緒に同じもの眺めててくれたんだよ」
「素敵な人ですね」
私は仕事だからなんだけど、決して退屈に思ったことはない。
真剣にそれらを眺めている木戸先生を眺めているのはそれなりに楽しい。
心の目とでも言うんだろうか。
私には見えていないものを見ている気がするから。
きっと由紀子さんもそんな風に木戸先生を見ていたんじゃないかな?
もしかしたら、いつも軽い人のように振舞っているのは、由紀子さんを忘れられないからなんじゃないかと思い始めた。
本当はとっても真面目な人なのに、無理しているように見えたのはそのためだったんだ。
本気の恋に臆病になっている。
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