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榎波 萌愛(えなみ もあ)。
22歳。大学4年生。
この春卒業して、その後の就職先は中企業の事務職。
卒論は提出済みだし、残りの春休みはバイトと合コンに明け暮れる予定。
だってちゃんとした彼氏欲しいし。
就職先は地味めな印刷会社だから出会いなんて期待できない。
「もっと出会いのあるバイト先にすればよかったなー」
カウンターにべったり上半身を預け、口を尖らせて呟くと、バイト仲間の瑠奈ちゃんが「そうですね」とクスクス笑う。
「瑠奈ちゃんは出会いあったでしょ」
私が言うと、瑠奈ちゃんはトレイを抱きしめて真っ赤になった。
「萌愛さんっ。声大っきい……っ!」
瑠奈ちゃんは17歳のピチピチ(死語)の女子高生。
卒業と同時に辞める私の代わりに、最近新しく入ってきたバイトの女の子。
実は倍率の高かった私の後釜。
彼女は募集と同時に滑り込んできた幸運な女の子ってわけ。
瑠奈ちゃんは今のを聞かれてないかキョロキョロ周りを確認してる。
大丈夫だよ。
あいつならゴミ出しに出てったから。
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