年下の彼

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駅のロータリーで野上さんの車を見送って、私達は改札で別れた。 野上さんは私達を早めに上げたせいで、またお店に戻るのだろう、来た道を戻って行った。 ホームに上がって自販機で暖かいミルクティーを買う。 それをカイロがわりに両手で持ってホームに立った。 まだ21時だというのに人影はまばらで、サラリーマンが疲れた顔をして立っている。 私は少し離れた位置で白線のすぐ内側に立った。 夜の闇と冬独特のシンとした空気が、感傷的な気分へと浸らせる。 あと一ヶ月ちょっとしたら。 こうして送ってもらうのは瑠奈ちゃんだけになるんだろう。 そこには当然だけれど私の姿はない。 いつの間にか最初から私なんていなかったように。 それが当たり前になっていく。 ひっそりと、静かに、変化の足音は確実に近づいている。 その頃には瑠奈ちゃんも健太郎に送ってもらえるようになってるかもしれない。 そこは私の与り知らぬ景色だけど。 そうなってるといいね。 私はひとつ離れたホームでこちらに向かって手を振る瑠奈ちゃんに笑顔を返した。
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