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始まりの調査 ②
―9:26 科学準備室
殺人事件が起こった為か この日 行われるはずだった 始業式と部活動紹介は 中止となった。
若槻さんは 部活動紹介で使う予定だった薬品を 部員たちと片付けていた。
「ようこそ 何もないけど ゆっくり していってね」
眼鏡をかけ 白衣を着た 神経質そうだが 優しい笑顔の青年…若槻 律が ビーカーを差し出してきた。
「こ、これは…?」
「何か 茶色の液体が…」
「あぁ 心配しないで これは カフェオレだよ」
若槻さんは 優しく微笑み ビーカーを おれと 高山さんの目の前に置いて おれたちの向かいに 着席した。
「それで? 僕に 訊きたいことがあるんだろ?」
若槻さんは 自分のぶんのカフェオレを一口飲み 眼鏡を左指で押し上げた。
「郷田先生が 殺害された事件についてです」
「あなたは 事件当時 殺害の現場を目撃していたんでしょ? どうして 先生にその事を言わなかったの?」
「言う暇もなく 非常ベルが鳴ってしまって 僕も 急いで トイレから出て 犯人を追ったのだけれど 見失ってしまってね」
若槻さんは 人のよさそうな笑顔で 答えた。
高山さんは スカートがめくれるのも構わず 机から 身を乗り出した。
「ズバリ!犯人は 誰?」
高山さんは いきなり確信を突いた。
「………」
若槻さんは しばらく黙ったが 左手の中指で 眼鏡を押し上げ 口を開いた。
「…芳賀 義弘 だよ」
「芳賀 義弘…?」
どこかで 聞いたような 名前だな…
確か…
「芳賀 義弘…
この学園始まって以来の とんでもない不良よ」
「あ! あの時の―」
そうだ 今朝 廊下で敏樹とぶつかった あの 身長180cm以上あった 大男…
アイツが 芳賀 義弘
若槻 律の口から語られた 犯人の正体…?
でも 何かが 引っ掛かる。
あの人を 信用していいものだろうか…
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