始まりの調査 ②

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「なら 事件当時の状況を説明してください」 今は 少しでも 情報が欲しいからな… 「僕が トイレに 入っていて 用を足して 外へ出ようとしたら 窓から 郷田先生が 体育館から出て来たのが見えたと思ったら あの 芳賀 義弘が 郷田先生の後ろから近付き 背中を刺して逃亡…そんなところかな」 「その時 先生はどこに?」 「ちょうど 非常ベルの前に居たよ」 「あなたは その時 トイレの どの部屋に 居ましたか?」 「確か…外からみて 一番右の部屋だったよ」 「なるほど…」 おれは 今 彼が言った 位置関係を メモしておいた。 今の証言には おかしな所があるが 今は訊かないでおこう。 「部長 ちょっと来てください」 「じゃあ 僕はこれで 失礼するよ」 科学部の部員が持っている段ボールには 『危険物』と書かれた ラベルが張られていた。 「それは…?」 「これ? これは 劇薬だよ。 これを扱うときは 僕か 先生に許可を取らないと 使ってはいけない事にしているんだ。 危険…だからね」 そう言って 若槻さんは 段ボールを 運びだした。 まるで あの段ボールを 他人に扱われるのが 嫌みたいだ。 あの人の詮索は 後回しだ 次は 郷田先生殺害の容疑者 芳賀 義弘に 話を訊かないと。 「高山先輩 そろそろ―」 おれは 一瞬 言葉を失った。 高山さんは 若槻さんが差し出した カフェオレを飲み干していた。 「意外にイケるよ これ」 「………」 おれも 一口 飲んでみた。 「…うまい」 少し ぬるくなっていたが 普通に 少し苦めの カフェオレの味がした。
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