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マダオ
―10:25 探偵部部室
「それじゃあ…!」
「入部します。だから…」
おれは 懐からハンカチを取り出し 依然 涙を流し続ける 香澄さんに ハンカチを差し出した。
「もう 泣かないでください…」
すると 香澄さんは顔を赤らめ おれが差し出したハンカチを奪い ソッポを向き 涙を拭いた。
そして ハンカチで顔を隠しつつ こちらを見た。
「……あんた モテるでしょ?」
「いえ ぜんぜん」
おれは 絵文字の↓
┐(  ̄ー ̄)┌ フッ
のようなポーズをとった。
「よかった~
これで 四人目ですね部長」
「よ、四人目…?!
足りないじゃないですか」
「そうね……少なくとも あと一人は 必要ね」
「だれか 思い当たる人 いないの~?」
いる……といえば いる。
でも…なぁ………
おれの脳裏に 敏樹と 彩乃の顔が浮かんだ。
敏樹は 確か 陸上部に入るって 言ってたな…
彩乃は 昔から絵を描くのが好きだったから 美術部に入るって 言ってたしな……
文化部の彩乃はともかく 運動部の敏樹は 難しいかもしれない。
おれが悩んでいると 再び 部室の扉が開いた。
「おぉ そいつが新入りか~」
「いのかっちゃん! 遅いよ~」
コイツかー!
生徒から あだ名で呼ばれている教師は。
「わりぃ わりぃ」
緑のジャージだし…
便所スリッパだし…
無精髭生やしてるし…
何か 期待してたのと―
「おっと! 期待外れだと 思っただろ!
どうせ 『なんだ ただの マダオじゃねぇか』って思ったんだろ?!
そうなんだろう!!」
「いや おれ まだ 何にも……」
先生は おれの肩を掴み 前と後ろにグラグラと揺らしだした。
の、脳が 揺れる…?!
「せんせぇ もぅ やめたげて…?」
「はっ……!」
先生は 我に帰り おれの肩から手を離した。
た、助かった………
悠哉くんに 感謝しよ。
「ゆうやぁ…
オレ マダオじゃないよな! 違うよな!」
先生は 悠哉くんにすがった……泣きながら。
「だいじょぶですよぅ
せんせぇは せんせぇですから」
「ゆうやぁ…
お前は いい子だなぁ」
泣くなよ 大の大人が…
「イノカツには 悠哉と同い年くらいの息子がいたのよ」
「だから いのかっちゃんにとって 悠哉くんは特別…」
「イノカツは 悠哉を 本当の息子のように 可愛がっているわ」
「そういうのって 何かいいな……」
おれも 親父と あんな風に 笑いあっていたのだろうか……
だったら いいな……
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