入部試験

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入部試験

―10:31 探偵部部室 「さて 落ち着いた所で…」 誰のせいで 騒いでいたと 思ってんだよ。 て いうか さっきの マダオはどこに行ったんだ…? 目の前にいる スーツで 髪もキチッとセットされていて 縁なしの眼鏡を掛けている 知的な男は 誰?! どう見ても さっきのマダオと 同一人物とは 思えない。 「どうだ? 驚いただろう。 これが 本来のオレだ。 さっきのは 調査の為の変装」 「そっすか」 確かに 変装の腕前は認めるケド… なんだかなぁ…… 「はぁ~……」 おれは 溜め息をついた。 それを聞いた先生は 軽く咳払いをしてみせた。 「改めて 自己紹介をば… オレは 伊能 克孝。 コイツらからは 『イノカツ』とか『いのかっちゃん』とか『せんせぇ』って呼ばれている。 お前も 好きなように呼んでいいぞ?」 そう言われても 正直 困る。 「じゃあ 本題に入るか」 先生は くわえていた煙草を灰皿で処分し 指を組んで 足を組んだ。 「まだるっこしいのは嫌いでな。 短刀直入に言わせてもらおうか……」 先生は それまでとは 打って変わり 真面目な顔付きになった。 「お前に 今回起きた 郷田 健康 殺害事件を解決して貰おうと 思っている」 先生は 組んでいた指を外し コーヒーカップを手に取った。 「もちろん 一人で解決するのは大変だから コイツらと協力してもいい… しかし 解決するのは 飽くまで 真悟 お前だ」 先生は カップを口に運び コーヒーを一口飲んだ。 「タイムリミットは 今日の正午…それが お前に与えられた 入部試験…つまり テストだ」 先生は おもむろにカップを置き 再び指を組んだ。 「お前なりのやり方で 解決してみろ。 まぁ オレはもう 犯人もそのトリックも証拠も全部分かっているがな」 先生は おれを試しているのか… よし ここは一つ この事件を解決して 認められてやる! 俄然やる気が沸いてきた……! 「オレは もう少し 通り魔事件の調査をしてくるわ。 あんまり 根詰め込み過ぎんなよ」 先生は 優しく 悠哉くんの頭を撫で 後ろ手に 手を振り 部室を後にした。 「じゃあ 早速 行きましょうか」 「悠哉は ここに残って留守番よろしくね」 「は~い」 やっと ここから 始まるんだ。 おれの 学園生活…… 探偵部としての生活が……―
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