2295人が本棚に入れています
本棚に追加
ウソつき律
―10:55 科学準備室
若槻 律の証言には 矛盾があった。
おれたちには それを証明できる。
いや…
証明するんだ……!
少しでも 事件の真相に近付く為に。
「どうぞ……」
若槻は 相変わらずの 優しい顔で おれたちを出迎えた。
その笑顔の下に隠された アイツの本性を 暴いてやる…!
「若槻さん…
あなたは確か 外から見て 一番右の個室から 事件を 目撃していたんですよね?」
「そうだけど……それが 何か?」
飽くまで シラをきるつもりか…だが そうはいかない……!
「だとしたら 妙なんですよ」
「な、何が おかしいんだい…?」
明らかに 顔色がおかしい…
動揺しているみたいだな……
「なぜなら あの場所からは 犯行の瞬間を目撃することは 出来ないんですよ!」
「―!?」
おれは 人指し指を 若槻に向けた。
どうだ…これで……
しかし 若槻は 不敵な笑みを浮かべ 左手の中指で 眼鏡を押し上げ 顔を上げた。
「なんだ……そんな事か」
なんだ…?
こいつの自信は どこから 来るんだ……?
「訂正するよ。
僕が見たのは 犯人が 郷田先生の手を使って 非常ベルを押していた所だったよ。
それなら あの場所からでも 見えるだろう…?」
「では 犯行の瞬間は 見てない…と?」
「あぁ 見てないんだ ゴメンね」
「ちなみに 芳賀 義弘と面識は?」
「面識?
そんなもの ないよ。
会った事もないし 話した事もなければ 見た事も―」
「若槻さん。
あなたは ウソをついていますね?」
「ウソ…?
ははっ… ウソなんかついてないじゃないか。
僕は見たんだ!
芳賀 義弘が 郷田先生を刺し殺し 非常ベルを押して 逃げたんだ!
ウソじゃない!!」
若槻は席から立ち上がった。
そして 先ほどまでの優しい顔は どこへやら…
コイツの仮面は 剥がれた。
最初のコメントを投稿しよう!