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郷田 健康 殺害事件の結末
―11:20 科学準備室
おれは 若槻 律が 犯人だと思っていた。
でも あの人が ウソをついていたのは 赤村先生のアリバイを証明するためだった。
アイツの仕掛けたトリックは 完全に崩れ去った。
「でも もし 郷田先生が電話に気付かなかったら どうしたのかしら」
「いや それはありませんよ。
若槻さんにウソをつかせたあの先生の事だから きっと あらかじめ 指示していたんですよ。
『電話をかけるから 体育館の外へ出ろ』とか。
もちろん 声は変えてね」
「なるほどね」
「じゃあ あの山崎とかいう 刑事にこの事を伝えて―」
「その必要は ない」
その時 科学準備室の扉から 山崎さんが現れ おれを指差した。
「そこの少年の推理を聞き 急ぎ赤村に 任意同行を求めたら 彼はあっさり 自分の罪を認めた。
だから 先程 緊急逮捕した。
殺人の容疑でな」
「仕事が早いですね」
「フッ……
それだけが 取り柄だからな」
山崎さんは 長めの黒髪をかきあげ おれに右手を差し出した。
「とにかく 協力感謝する。
……そう言えば まだ 君の名前を訊いていなかったな」
「霧生 真悟です」
すると 山崎さんは ハッとして おれの顔を凝視した。
「成程 面影はあるな…」
「父を知っているんですか…?!」
「知っているというほどではないが…」
「何でも良いんです。
些細な情報で 構いませんから 何か教えて下さい!
お願いします! 山崎さん!」
「………」
山崎さんは しばらく考え おれの目を見据えて 頷いた。
「分かった。
後で 五年前に霧生 秀明が失踪した あの事件の資料を送ろう。
事件解決に協力してくれたお礼だ」
「ありがとうございます!」
やっと 希望が見えてきた気がする。
どうして 親父が失踪したのか……
その答えは 資料にある。
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