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部室のデスク
―11:50 探偵部部室
伊能先生に言われた通り 正午までに事件を解決したおれは 探偵部の部室に戻って来た。
「おぅ お前ら。
事件解決 ご苦労さん」
伊能先生は ソファーでくつろいでいた。
「さて…と」
伊能先生は ソファーから飛び起き おれの方へ歩み寄り 手を差し出した。
「おめでとう。
入部試験 合格だ」
「ありがとう ございます」
おれは 伊能先生と握手を交した。
伊能先生の手に触れて 初めて気付いた。
彼の手が 傷だらけであることに。
「あ。
この傷は まぁ 若気のいたり……ってヤツだ。
気にすんな」
伊能先生は 急に手を引っ込めた。
「そうだ。
真悟 お前あてに 封筒が届いてるぞ」
そう言うと 伊能先生は 奥のデスクへ向かい 封筒を探し始めた。
すると 高山さんが おれの肩を叩き 耳元で囁いた。
「いのかっちゃんは 昔 探偵だったらしいわよ」
「それ 本当 ですか?」
高山さんは 頷いた。
「なんでも 五年前に 霧生先生の助手をしていたらしくて 先生が失踪した事件のことも 何か知ってるカモ…」
「あったぞ~」
伊能先生は デスクから 封筒を見つけだし おれに差し出した。
「ホラよ。
まさか あの山崎が お前にコレを渡すなんてな……」
「伊能先生!
山崎さんのこと 知ってるんですか?」
「まぁ……な」
伊能先生は 寂しげな表情で 奥のデスクを見つめた。
「あのデスクはな 霧生先生が使っていた デスクなんだ…」
「―!?」
何だって……?!
あのデスクが 親父の―
「オレは あの人の側にいながら 何も出来なかった……
オレの力が及ばなかったばかりに……本当にすまなかった」
伊能先生は おれに頭を下げた。
おれは 五年前に何があったのか 知らない。
でも きっと 親父には何か考えがあって 動いたんだ。
少なくとも おれは そう 信じている。
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