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それぞれの役割
―12:00 探偵部部室
おれは 伊能先生から 五年前の事件資料を受け取り 席についた。
「これで お前は 探偵部の仲間だ。
だから お前たちとオレ…
それぞれの役割ってヤツを教えておく」
「それぞれの役割……?」
伊能先生は 頷いた。
「例えば オレは『変装』により 潜入や調査を担う」
「あたしは 広い人脈を利用しての『情報』集め」
「わたしは 事件現場の状況や 証人の証言なんかの『記録』」
なるほど だから あんなに メモをとっていたのか。
「悠哉くんは……?」
「コイツは……
みんなが 安心して捜査できるように あらゆる面からの『補佐』だな」
「えへへ…
なんか くすぐったいな」
伊能先生は 悠哉くんの頭をわしわしと撫でた。
二人を見てると 昔のおれと 親父を見ているみたいで なんだか 微笑ましく見えた。
「そこで…真悟 お前の役割だ」
「おれの 役割……」
今のおれに 何ができるのだろうか。
今のおれにできること。
それは おそらく……
「お前の父譲りの推理力で 事件を解決に導く『推理』がお前の役割だ」
「親父譲りの……『推理』」
それが おれの役割。
今のおれに できること。
「そう言えば 今日はこの後の日程は全て中止。
生徒は 寮の自室で待機だそうだ」
あんなことが あったからな……
まさか 犯人が教師だとは 思わなかっただろうからな。
「と いうわけで オレも職員会議にかり出される事になったから そろそろ行くわ。
お前ら 気を付けて帰れよ」
伊能先生は ネクタイを締め直し 眼鏡をかけて 部室を後にした。
おれたちは しばらく談笑し 寮へ帰った。
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