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五年前の報告書
―22:00 学生寮自室
おれは 探偵部の面子と別れ 寮の自室に帰って来た。
「なんか 大変だったね 真悟」
「そうだな。
初日から くたびれたよ」
この寮は 二人で一つの部屋を使っている。
もちろん 自分の部屋もある。
おれたちが今いるのは 二つの部屋の間にある リビンク。
ここには テレビもあるし エアコンも冷蔵庫もある。
電子レンジもあれば キッチンだってある。
「でも この部屋って 快適だよな~」
「敏樹。
ジュータン汚すなよ」
「わかってるって」
それでも敏樹は ゴロゴロと ジュータンの上を転がっている。
おれは 敏樹と同じ部屋になった。
男子寮と女子寮は 巨大な柵を隔てて 10mくらい 離れている。
彩乃もそこにいる。
「それにしても 先生の中に 犯人がいたなんて…」
敏樹は ゴロゴロするのを止めて 急に真面目な顔になった。
「そうだな……
おれには どうして 赤村先生が あんなことをしたのか分からない……
でも 人殺しは よくない」
「あ~ぁ…
オレも 真悟と事件解決したかったな~」
「お前は 暇潰しがしたかった だけだろ」
「真悟 きびし~」
「早く 寝ろ」
「は~い」
消灯になり 敏樹が寝静まった頃を見計らい 山崎さんから託された五年前の事件記録を 机の上に広げた。
「―2002 2月22日
霧生 秀明と その助手 伊能 克孝は 十五年前に起きた殺人事件の容疑者を時効までに逮捕しようと 警視庁との協同戦線を張った。
その当時 新人刑事として 捜査一課に配属された私 山崎 御門が 霧生氏の補佐としてその任についた」
これは 山崎さんが 新人刑事時代に書き記した 報告書……
これに 親父の行方を知らせるヒントが記されているかもしれない。
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