寝不足注意報

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寝不足注意報

―4月10日 7:10 高等部寮 食堂 「ふぁ~あ……」 「眠そうだね 真悟」 「ん? そぉか?」 確かに……眠い。 昨日…いや 今日の明け方の3時頃まで あの報告書を読んでいたからな。 でも それなりの 収穫はあった。 五年前に 親父と伊能先生が追っていた事件の担当者は 当時 新人刑事だった 山崎さんで その時の犯人の時効が成立するまでに時間がなく 焦っていたらしい。 それで ある悲劇が起きた。 逃げる犯人は 通行人を無差別に襲い 警視庁へ侵入し 婦人警官だった伊能先生の奥さんを殺害 さらに 山崎さんを迎えに来ていた弟さんも 錯乱した犯人に殺されそうになった。 ―その時 一発の銃弾が 犯人の命を奪った。 その銃弾を放ったのが おれの親父 霧生 秀明だった…… それが 五年前に起きた事件の真相。 その時の事故が原因で 親父は世論から叩かれ 罵られ『人殺し』の汚名を一人で被り おれたちに迷惑がかからないように 姿をくらましたんだ。 おれは 親父を誤解していた…… 親父に会って伝えるんだ。 今のおれの気持ち 思い。 一言 『ごめん』と。 「……んご。 真悟ってば! きーてる?」 「―はっ…! あ、あぁ……何だっけ…?」 やばい 危うく トリップしかけた。 寝不足はいかんな。 「真悟 敏樹 おはよ」 朝食をプレートに乗せた彩乃が おれたちの座っていた席の隣の席に来て着席した。 「あやのん おはよう」 「今朝はそれだけか?」 敏樹のプレートには 牛丼(つゆだく)と味噌汁と和風サラダと緑茶が乗っているが 彩乃のプレートには アロエヨーグルトとバナナが半分とオレンジジュースしか乗っていない。 「それだけで 昼までもつのか?」 「私はダイエットしてるの。 それより あんたに言われたくないわ」 彩乃は まだ手をつけてないプレートを指差した。 「あんた トースト一枚と ハムエッグとカフェオレだけじゃない。 私といい勝負だわ」 「おまえよりは 食ってるよ」 おれは カフェオレを一口飲んだ。 やっぱり 甘い。 何か引っ掛かるんだよなぁ この味。
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