霧生 秀明

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霧生 秀明

―8:15 渡り廊下 「私は 高山 由美 高等部普通科の二年生よ」 高山さんは こちらに近付き おれの目の前に 右手を差し出した。 「よろしくね」 「あ… こちらこそ―」 おれが 高山さんの手を取り 握手をしようとした その瞬間― 「―霧生 真悟くん…?」 「―!?」 おれは 動揺して汗ばんだ手を 引っ込めた。 「あぁ 警戒しないで」 高山さんは 慌てた様子で おれの手を握った。 「名簿を見て “霧生”っていう 名字を見つけて…ひょっとして 霧生 秀明 先生の息子さんかなぁって…」 「霧生 秀明って たしか 真悟の親父さんだよね?」 「あ、あぁ…」 そうだ おれの父親は 霧生 秀明… 世界的に有名な探偵で おれは そんな親父を 誇りに思っていたし おれも 親父のようになりたくて 探偵を志し 勉強していた。 しかし…親父は― 「失踪されたって聞いて 心配していたのよ。わたし あの人の 大ファンだったから…」 親父は 今から 五年前 ある事件を追っていて 行方不明になった。 だから 今 ウチに 親父はいない… それからだ おれが 探偵を志すのをやめたのは… 大切な人を 家族をほったらかして 何も言わずに いなくなる…そんな 身勝手でどうしようもない 親父みたいには なりたくないから…だから おれは 探偵を諦めたんだ。 「お母様の容態は…?」 「まだ 眠ったままです」 親父が失踪したことで 母さんは ノイローゼになり ガス自殺を図り 命は取り留めた。が それ以来 植物人間…つまり 意識はあるのに 目を覚まさなくなってしまったんだ。 それも 全部 親父のせいだ…!!
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