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直接俺とは接点のなかったその上司が独立の為会社をやめたと聞いたのは1年程前だったと思う。
そして彼女の話によるとその元上司は半年前に離婚したらしい。
独立したばかりで忙しい上に離婚。
どういう理由があったかはわからないが、離婚というものは身内の死の次くらいに精神的ダメージを受けると聞いたことがある。
彼女はそんな彼を放っておくことは出来ず、また彼も彼女を頼ったらしい。
俺の知らないところで2人は会うようになり、また距離を縮めていった。
かつて俺が彼女とそうだったように。
彼女が別れたくても別れられずにいたくらい好きな男だ。
離婚して奥さんもいない状況になり、過去のものだったはずの想いがよみがえってきてしまったのだろう。
「幸大くんにはホントに申し訳ないと思ってる…。」
彼女が流す涙を呆然と見つめ、人間こんなに泣けるもんなんだななんてどうでもいい感想を覚える。
「俺にはもう少しも可能性は残ってないの?」
「…私の勝手でこれ以上幸大くんを振り回すことは出来ないから。だから…ホントに…ごめんなさい。」
「……わかった。」
どこか現実味がなく、そしてどこか他人事の様な物分りのいい言葉が口からこぼれた。
何も考えたくなかった。
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