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会社で嫌でも彼女に会う機会があり、家に帰ってきても指輪ケースが目に入る。
それなら目の届かないところにケースを移動させればいいだけの話なのだが、なぜかそれも出来ずにいた。
あの日から、どこか他人事のようだった出来事も時間が経つにつれてだんだん現実なんだと受け入れられるようになってきた。
受け入れると同時に胸にポッカリ穴が開いたような、なんとも言えない孤独感と悲愴感に襲われる。
幸いなことは俺達の関係を会社に知られていなかった為、周りが変わらず当たり前の日常であることだ。
これで別れたらしいなんて噂が出回ったら更に落ち込んでいたかもしれない。
そして更に幸いな事は打ち込める仕事があったこと。
仕事で動き回っている間は仕事だけに集中出来る。
だからか、俺は朝から晩まで今まで以上に働き続けた。
そんながむしゃらに働く俺を見て、同期の須田だけが唯一俺の異変に気付いたようだった。
「なんか…お前ここんとこ異常なくらい働いてないか?」
社員食堂で昼食を食べていると向かいに座って食べていた須田が徐にそんなことを聞いてきた。
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