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「新庄心か、心……うむ、良い名じゃな。その名をつけてくれた親に感謝をする事じゃ」
おじさんが言う。
「ではシンよ。おぬしにちょこっとお話しをしてやろう」
おじさんが語り始める。
「この神郷村には変なルールがあるんじゃよ」
おじさんが言う。
「神郷村は東西南北に分かれておってのう、何故かは知らんが昔から仲が悪いんじゃよ」
おじさんが言う。
「その仲の悪さの分かりやすい例がのう……少年野球大会なんじゃよ」
おじさんが言う。
「同じ村の者どおし、仲良くすれば良いものを、代表決定戦だの何だの言って争いをしておる。大の大人が子供を使ってのう、滑稽な話じゃわい」
おじさんが言う。
「お、そうかそうか、おぬし北の者じゃったな、ならばこの話を知らないのは無理ないわい。北の村には野球部がないからのう。この滑稽な大会には参加しておらんし関係しておらんのじゃから」
おじさんが言う。
「昔はこんなんじゃなかったんじゃがのう」
おじさんが言う。
「昔は東西南北全てが仲良くしとったんじゃが、時の流れとは残酷じゃのう……たったの数十年でこんな風になってしまうんじゃから。いや、怖いのは時の流れではなく、人間か」
おじさんが言う。
「儂はのう、小僧。今回のその代表決定戦でこの村を変えたいと思っとるんじゃよ。昔みたいな村にのう」
おじさんが言う。
「そこでおぬしの力を借りたいんじゃ。貸してくれんか?」
おじさんが言った。
「おぬしのその右腕を」
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