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○○○
それから誰とも会話をする事なく、弁当も一人で食べ、帰りの会を終え、シンはランドセルを背負い下校する。
下駄箱へ行くと案の定靴が隠されていたが、朝と同じゴミ箱へ捨てられていた為すぐに発見できた。
靴の汚れを払い、下校を開始するシン。何故だろうか、その表情からは笑顔がこぼれていた。
「明日の放課後はドンキースで野球だ、頑張ろう」
野球--それがシンの救いとなった。野球で出会った友達という存在が、今まで苦しかった事も苦しなくならせてくれた。
シンの前には今、希望が広がっている。
○○○
そんなシンの姿を校舎の二階から眺めている初田先生と清文。
「何故か今日のシンは、心なしかいつもと違っていたな」
「先生も感じたのか」
「ああ、力強い目をしていた。何か心境の変化があったのかな?」
「かもな」
「君の見込んだ通りだった。先生が思っているのよりもずーっと、あいつは強かった、のかもしれない」
「かもしれない、なのかよ」
「人生、これから先何が起こるか分からないからね、今のところは疑問形って事で」
「何だそりゃ」
笑顔で会話をする二人。二人の見る景色からシンの姿が消えた。
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