ある兄妹の話し

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俺の最初の記憶は俺が6才の時のものだ。 隣には小さな女の子。 多分、カスミだろう。 カスミは隣で眠っていて、俺は廃墟を見上げていた。 そして、その廃墟を探検したんだ。 その頃のカスミは普通の女の子だったと思う。 宇宙人を探してもいなければ、完全記憶能力も持っていなかった。 でも、2人で立ち入り禁止の廃墟に入って探検をして、そして……何かを見た。 気がついたら廃墟の外にいて、それから、カスミは変わった。 今までは無かった完全記憶能力をもち、宇宙人に異常な興味を持った。 それからだった。 毎日の様に宇宙人を探し回ったのは。 俺は毎回それに付き合った…いや、付き合わされた。 カスミは俺にお願いがあると、俺の目をじっと見てくる。 その目を見ると、断れなかった。 嫌とは言えなかった。 あの時、いったい何を見たのか。 俺は思い出せなかった。 アレがどこの廃墟で何を見たのか。 カスミにも聞いてみた事がある。 でも、 「ゴメン…私も覚えてないんだ…。」 結局、あの時探検した場所も何を見たのかもわからず終いだった。 ただ、それからカスミは色んな奴に狙われる事になる。 完全記憶能力がそんなに珍しいかどうかは、俺の知ったこっちゃない。 でもそれが原因でカスミが狙われるなら、俺がそうはさせない。 カスミは俺の妹だ。俺が絶対に守ってやる! 子供ながらに、俺はそう決心したんだ。 だから、カスミからはなるべく目を離さない様にしていた。 …なのに!
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