ある兄妹の話し

8/16
前へ
/62ページ
次へ
「…なのに! クソッ…」 もう一度部屋の中を見回す。 乱雑に物が散らかってはいるが、人1人がいるかどうかは一目でわかった。 …いない! 落ち着け! 仮に誰かに狙われていたとしても、俺が近くにいたんだぞ? そんな状況で何かあるわけ… ここは、人里離れた森の中… 辺りに民家は無く、助けを呼んでも誰も来ないだろう。 ……クソッ! 部屋を飛びたし、コンクリート壁の廊下へとでる。 左右の通路にライトの光を向ける。 …チッ、誰もいないか! これで冗談とかだったらあの女絞め殺す。 「オイ!カスミ!! 隠れてんなら今すぐ出て来い!」 わずかな期待を込めて辺りに怒鳴りつけた。 返事は…ない。 …カスミがいなくなって1分も経ってねぇ! まだ近くにいるはずだろ。 最近は狙われている様子が無かったから油断した。 絶対に守ると決めたのに! 山勘で右に走った。 そのまま突き当たりの壁にあった隙間から、外へと転がる様にでる。 外は月明かりのおかげで、屋内よりも明るい。 辺りを見回す。 …いた! 遠目だが、5・6人の男が森の中へと歩いて向かっている。 その内の1人は何かを担いでいた。 「カスミィー!」 猛然と走り出そうとした時、頭に強い衝撃を受け膝をつく。 「…グッ」 殴られた。 そう理解するのに数秒かかった。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加