ある兄妹の話し

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「やめておけ…大の男が5人だ。 突っ込んだ所で結果は目に見えてるだろ…。」 …誰だコイツ? 背後に、タバコをくわえている1人の男が立っていた。 無精髭を生やし、背広姿。 年は30後半ぐらいに見える。 この場所には全く合っていない。 「何だよお前? アイツを拐ってどうするつとりだ!」 何とか叫んではみたが、頭は朦朧とし、足には力が入らない。 …クソったれがぁ。 「…俺達が何なのか… それを知る必要はない。ただ妹さんは…諦めろ。」 諭す様に、だが冷酷にどこまでも冷たく言い放つ。 …何か、ふざけた事ほざいてねぇか? 「…クソッ。そんなに、完全記憶能力ってのが欲しいのかよ? アイツ以外にも持ってる奴はいるだろうが!なんでアイツ何だよ?!」 足にはまだ力が入らない。 「完全記憶能力…ねぇ? 残念だがそこじゃないんだよ。妹さんを狙った理由はな。」 …違う、のか…? ツバサにとってそれは意外だった。 カスミが狙われる理由が他には思いつかない。 …じゃあ、どうして… 「なんで、カスミを狙う?」 男はタバコをすい、一呼吸おいた。 「教えてやる義理は無いんだがな…」 男は俺を見下ろし、何事か考えている様だ。 もしかしたら、話していい情報と悪い情報を考えているのかもしれない。 足に少し、力が入る。 「ヒントだ…これ以上は聞くな。 完全記憶能力の原因、俺達が狙う理由はそれだ。」 …原因? あの時の事、何でコイツらが知ってんだよ。 「はっ! 残念!アイツは何も覚えちゃいねぇよ!」 俺はあざ笑うかの様に言った。 「気がついたら持っていた。それだけなんだからな!」 もう、足に力は入っている! ツバサは飛び起き様に男の膝に横から蹴りつけた。
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