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それでもダイコクは動かない。
老いて反応が鈍いのか、それとも当てるつもりがない僕のこと見透かしてなのか...
憎たらしく、"マー"と、一言声をあげた。
そっちがその気なら、僕だってやってやる...
そう思い、再び竹ぼうきを構えたときだった。
「おやっ、リンコウさん。掃き掃除かい? ご苦労様だね」
突然、背後から声が聞こえ、倫広(リンコウ)は慌てて竹ぼうきを持ち直した。
振り向くと、いつもお寺の手伝いをしてくれている総代さんが立っていた。
腰を曲げ、白髪を後ろで一つにまとめた彼女の手には、水桶が持たれている。
総代(ソウダイ)さんというのは、お寺の檀家さんたちをとりまとめる、いわゆる代表を指す呼び名になるのだが、この方の場合はそれだけじゃない。
ほぼ毎日と言っていいほど、天巌寺に通い、更には電話番などまでこなしてくれる...ある意味、仏様のような有難い方なのだ。
この人も、もうすぐ八十歳を越えるはずだが、そのわりにシミも少なく、肌つやもいい。
気品溢れる"昭和のお婆ちゃん"って感じだ。
「トヨさんこそ、水撒きですか? いつもすみません」
「いやいや」と、トヨは小さく手を振った。
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