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そして、あの日...
カヨ子は、急に山にタチアザミを採りに行きたいと言い出した。
その理由が、実に興味深かった。お爺さんに怒られた...と、言うのだ。
確実に、あの線香の影響で幻覚を見ている証拠だ。
おまけに、誰もカヨ子がおかしくなったことに気がついていない。
いや、気がついたとしても、きっと歳からくる精神病と勘違いするはずだ。
ならば...と、今度は更に濃度の濃い線香を帰り際に手渡した。
今度は、どんな風になるのか...ある意味楽しみで仕方がなかった。
しかし、ここで予想外のことが起きた。
カヨ子が、柱に頭を打って死んだとの連絡が入ったのだ。どうやら、濃度が濃すぎたようだ。
計画外のことではあったが、でもこれで不安材料が消えてくれた。
後は事件性を排除し、俺はカヨ子の精神異常について、シラをきればいい。
スムーズに葬儀が終われば、この場所を知る者はいなくなる。
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