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「これも、日課の内だからねぇ。やらないと、かえって気持ちが悪いもんさ」
曲がった腰を持ち上げ、砂利の敷かれた境内を一望すると、トヨは水桶を地べたに置いた。
「それにしても、こんなところでダイコクが毛づくろいなんてね...」
「おぉよしよし」と、寝転ぶダイコクの顎を撫でた。
気持ち良さそうに目を瞑り、ゴロゴロと喉を鳴らしている。
僕にはそんな顔を見せたことすらなく、どこか憎たらしくも思えた。
「そうなんですよ。お陰で掃き掃除が出来なくて」
「猫とはそんなもんさ。自由気儘...いいことじゃないか...」
「それよりも」と、トヨは意味深に空を見上げた。
「何も起きなきゃいいんだけどねぇ」
さっきまで晴れていた空に、うっすらと雲がかかっている。
今にも雨が降りそうな、どんよりとしたねずみ色を帯びていた。
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