知らせはいつも突然に

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失礼ながらも、その様子に思わず苦笑した。 トヨさんは、こんなところまで真面目なんだな...と、半分呆れながら、掃除の続きをしようと、引き戸を閉めかけたときだった。 ジリリと音が鳴り響いた。 聞き間違えようのないベルの音は、まさしく黒い電話が鳴っている。 僕は、信じられない気持ちで踵を返すと、トヨの横に飛んでいった。 「やはり来おったの」 黒い電話に向かって一度、両手を合わせると、トヨはゆっくりと受話器を持ち上げた。 「はい、天巌寺です...はい。えぇ...そうですか、わかりました。では、方丈(ホウジョウ)に伝えておきますので、後ほど連絡させていただきます...えぇ」 眉尻を下げながら、トヨは簡潔に話を聞いていた。時折うなずきながら、手元の用紙に何やらメモをとっている。 "方丈に伝える"と、発言したということは、やはり葬儀の知らせになるのだろう。 方丈とは、その寺の住職を指す。とある有名な僧侶が、一丈四方(四畳半)に住んでいたという語源からくるものになるのだが... 実際に、一丈四方の住居で暮らす住職はいないだろう。 その住職から掛け直す用といえば、やはり葬儀の段取りが一番多い。 .
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