4592人が本棚に入れています
本棚に追加
/420ページ
「葬儀の知らせ...ですか?」
受話器を置いたトヨに、恐る恐る声をかけた。正直、まだ信じられないのだ。
「二丁目の安田さんとこのお婆ちゃん、亡くなったんだって...」
「最近まで、元気そうだったのに」と、トヨは目尻を指で拭った。
安田さんといえば、トヨさんと同じくらいの年齢だった気がする。
つい先日、お墓参りに来ていたところを僕も見かけていた。そのときは、確かに元気そうだった。
「すまないけど、テルちゃんにこの事を伝えてくれる? わたしゃ、皆に連絡しないといけないからさ。本当、急で信じられないよ」
「わかりました」と、小さく頷いたが、本当は僕の方が信じられなかった。
修行に来て、初めての葬儀の知らせが、まさかこんな風に来るなんて、思っても見なかった。
不思議なこともあるものだ。
だが、この不思議な出来事がきっかけで、このあと思いもよらぬ事件に、僕が巻き込まれることになるとは...
このときはまだ、知るよしもなかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!